気づくのがいつも遅い


 腕時計が、また戻ってきてしまった…。消えてしまってよかったのに。空中分解してこの世からなかったことにできたらよかったのに。当たり前のように、いつまで私の左手首に居座り続けるつもりなのか。
 この14年、一歩も先に踏み出せなかったのはこの時計のせいだけではないけれど、悔しいけれど、それが現実。本当に、運命の女神は気まぐれだ。幸運をもたらしたかと思えば、まるで試すかのようにどちらかを選ばせ、あげく、地上へと叩き潰す。その繰り返し。
 今では、罪悪感から身動き一つできないでいる。人を好きになることさえ許されないような、そんな気がして、離れて、悪態をついて、結果会いたくて、もうゴマかシきれない気持ちにやっと気づく。その時にはもう遅すぎてどうしようもなくて、ただ年をとって老いぼれて…。


 固く結ばれた運命の糸、そんなものが本当にあるのなら、アレキサンダーよろしく、思い切りよく断ち切ってしまう悪魔よ、どうか現れないで。って、悪魔は私かもしれないな…。


 以上、酔っ払いの戯言でした。