自分が一番の残念な娘


 先月カリフォルニアの大学に留学した姪っ子Yのブログを覗いたら、一つだけ更新されていた。宿題は大変だが授業は比較的簡単とか言ってる。が、この娘の勘違いぶりは尋常じゃないので授業だってどうなのか実際のところはわかりゃしない。
 普段の他者に対するあまりの配慮の無さから、最近では公然と家庭内でウ○コちゃん呼ばわりされている。とにかくYのことになると私たち三姉妹の話は尽きない。


迷惑だからYは社会に出しちゃダメだよねえ。

周りがイライラして病人がでてるのに、本人はケロッとしてそう。

見合いして結婚させた方が被害が小さくて済むんじゃないか?

ブスで気が利かないが、今なら若さだけはある。救世主(Yに負けない愚かな貰い手のこと)がきっといるはずだ。

ホントウにあの女…。


 あの女…、の部分は姉(=Yの母)である。"娘"を"女"呼ばわり。義兄(=Yの父)は「とにかく根拠ないのに自信過剰だよネ。で、恩着せがましい?長女だから…」と、ニヤニヤしながら姉をチラ見する。どうやら何人兄弟の何番目に生まれたかでわかる性格診断の番組を見たらしい。
 Yと真逆でしっかり者の妹Aちゃんは、二歳くらいの時にYが広げていたビーズに手を伸ばした瞬間、無言のYの飛び蹴りがお腹にヒットし、「うっ!」と短く声をあげ、小さい体をコの字にして後ろの襖までふっ飛んだそうだ。Aちゃん本人は忘れてしまったようだが、それを目撃した(三姉妹の中で一番狂暴な)妹はかなりのショックを受けたようで、Yの話が出る度「普通する?自分よりちっちゃい子に本気の飛び蹴りなんて…。フルちゃんに"貧乏人ごっこ"っていうわけのわかんない遊びで押し入れみたいな狭い所に入れられて、汚い毛布を掛けられたのは覚えてるけど」と、とんだ飛び火が我が身にふりかかった。
 えー、押し入れではなく机の下ですね、それは。掘っ建て小屋に見立てたのです。そして掛けたのは汚い毛布でもなく、ちゃんと洗ってある清潔なバスタオルです。だって幼かった妹はまるで外国のお人形さんみたいにとぉーっても可愛くて片時も傍を離れたくなったので、当時お気に入りだった絵本『ひとりぼっちのミレーヌ』という哀しいお話の世界に、妹も引きずり込んだのだ。「寒くない?」って抱きつかれては何枚もバスタオルを掛けられる妹。何が起こっているのかわからんが、本能的に危害が加えられることはないようだと理解したのだろう。じっとオスワリして、妹の大きな瞳だけが私の手の動きにあわせて上下してたっけ。ヨダレでちょっびっと濡れた唇も可愛かったなあ。(遠い目)そんな妹も、もうオバサンだけどね。
 まあ、なんにしても、Yがこの留学生活を無事まっとうし、様々な人種の中で揉まれながら成長して(できれば横にも)、せめて一年間の浪人生活を傍で支えてきたおじいちゃん、おばあちゃんに優しい言葉の一つでもかけられるような大人になってくれたらと思う。あまりにも蔑ろにしすぎるんじゃよ。