息もできない

fleurette2010-10-11



2008年 韓国
監督・脚本・出演:ヤン・イクチュン
出演:キム・コッピ、イ・ファン


 胸がしめつけられて、"息もできない"、まさにそんな映画でした。

 逃れようのない"血"の苦しみ、それよりおぞましいものなど持たない恐いもの知らずなチンピラのサンフンと女子高生のヨニが出会う。
 精神に異常をきたした元軍人の父と不良の弟の世話で絶望的な日常を送り、ヤケになっているヨニは気を紛らわすかのように何かにつけサンフンを呼び出す。自分の苦しみは一言も話さない。話せば、ただ互いのキズを舐め合うだけの関係に堕してしまっただろう。
 絶望的な暮らしを送りながら、精一杯の見栄を張るヨニの強さ、無力だった子どもの時に起こったあまりに大きなショックな出来事に、純粋な憎しみだけが心の拠り所となってしまったサンフン、その二人がサンフンの幼い甥と三人で過ごす、二人にとってはおそらく夢見たであろう、楽しく過ごす(擬似)家族のシーンがあまりに切なくて…。
 互いの本当の所は何も知らない二人。だが、"血の苦しみ"を知る二人は、それを嗅ぎわけている。それぞれの苦しみを哀しみを正面から受け止め素直に、共鳴して震える合わせ鏡のようにして、互いを自分の半身だと知る。
 が、現実は何処まで残酷なのか。オープニングと同じように背後からの不意打ち、しかしそれが今度は違うものに…。哀しみの中、サンフンと入れ代わるように裏の世界に飲み込まれた弟の姿を目撃したヨニは、かつて母を殺したチンピラの姿=サンフンを重ね、ただ茫然と立ちすくむのだった。

 まだ今年は終わっていないのに"ベスト1"とか言ってしまうのは口が軽いようでイヤなので、用心して言わせて頂くなら、私の今年見た映画の"ベスト2"には間違いなく入りますね。(あんま変わんないか!)