心遣い


 先週あたまに、アパートの下の階のコが転職して引越することになったと挨拶にきた。


 昨年の地震の時、彼女は風邪で休んでいた。私は直後、一人黙々と駐車場に休憩所(といっても段ボールの上に物置にあった古いカーペットを敷いて、部屋から毛布やポットを持ってきただけ)を作って、アパートに残っていた人たちを休ませたりしていた。が、日が暮れて寒くなってきてからは、周辺の殆どの人たちが部屋には戻らず建物から離れた駐輪場の車の中で一夜を過ごした。その時、一人暮らしだったそのコが一人では怖いと言うので、私の車で一緒に一晩を過ごしたのだ。


地震の時はお世話になりました。とても心強かったです。これ、タオルで、ありきたりなんですけど使って下さい。」


「お、おう。ありがとう。」


 アパートの階段を降りていく後ろ姿に「気をつけて、元気でね!」と声を掛けると、ペコリと笑顔で頭を下げ闇の中に消えて行った。

 部屋に入って洗濯物を畳んでる時、さっきのタオルも一緒にしまおうと包みを開けると、なんと私の一番最初のハンドルネームが刺繍されていた。ハンドルネームっていうか、メアドか。なんかあった時のためにメアド交換をして、その時に意味など説明したりしたか、な?まあ、そういう名のブランドがあったこと自体は偶然だろうけど、覚えていてくれたんだな。なんかニコニコしてると思ったのだ。

 気が利いてる、ってか、ええコや。幸せになるんやで〜。おばちゃん、祈ってるわぁ(←なぜ関西弁?)。