メンドクサイ女たち


 土曜の夕方、実家に来ていた姉からプールに行かないかと誘われた。


 いやな予感がした。市民プールは20時までやっているから2時間は泳げるとか、近くにスポーツジムができたからそこでビジターで泳ごうとか。突っ込みを入れると全てがあやふやな情報ばかり。それでも春登山に連れて行ってもらうことになっているのでここらで恩を売っておくかと、10年前のセパレートの水着の上にトレパンとパーカーを着てお風呂の準備もして姉を呼びに行くと、私の赤兎2号を運転したいと仰る。やだわ、確かに私よりデカイ車を乗り回してはいるけれど、この人の運転を全く信用していないのだ。不注意による物損事故数回。


 駐車場を出る時から「ぎゃあー、やめてー、ぶつかるー、どうしてもっとちゃんとバックしてから切り替えさないのぉー!」と車内には悲鳴とも怒号ともつかない私の絶叫と姉の笑い声が。


 「市民プールはホントに20時まで?」

 「お母さんが言ってたよ」

 「お母さん?それ信じるんだ…」

 「う、うん、そうね〜、あやしいかな」



 いきなりハンドルを切ってあらぬ方角に走り出す赤兎2号。



 「何?どこへ?」

 「ゆったでしょ、新しいスポーツジム。この辺だと思うんだ。うら覚えなんだけどね」

 「ウラオボエ?(聞き逃さないワタクシ)うろ覚えでしょ。うる覚えと間違える人はいてもうら覚えっていう人は初めてだよ」

 「そっか。うら覚えかー。ん?うる覚え??(さすが我が姉!)」

 「で、そこっていきなり行ってビジターで泳げるとこなの?」

 「………(無言)」


 わからないらしいが到着してしまった。けっこう大きな施設。こういう無言になった時、すぐ人に押し付けようとするのはわかっている。ので、先手必勝。


 「じゃあ、ビジターで泳げるか訊いてきてよ、車で待ってるから」

 「え、フルちゃん、来てくれないのー?」


 取りあえず一緒に中に入ってフロントで聞いてこいと促すと、しばらくしてから手招きする姉。やだ、メンドクサイわ。


 「これから見学することになった」

 

 姉よ、泳ぐのはどうなったのか?我々にはもう時間が…。アンケート用紙に個人情報をてんこ盛りで書かされ、新人と思われるメガネ君に引率されて館内を見学。30分のタイムロス。


 これではもう市民プールに行ってもろくに泳げないだろうから帰ろうとすると(今度は私が運転していた)、鬼の形相でプールに行くと言い張る姉。この時間では行っても30分くらいしか泳げない、それに本当に20時までなのかも疑わしい、と言っても「30分みっちり泳いだら結構な運動量だよ、30分でもいい!」と依怙地になっているので、半分呆れながら車をUターンさせると、


 「え、何?フルちゃんの言った通りになるのを確かめるために行くの?」(は?)

 「だって30分でも泳ぎたいんでしょ?だから行くんだよ。私は泳げないからプールに入るんだったら時間かけたいほうだから、今日は遠慮するけどね。ウォーキングでもしてるよ」

 「……。やってなかったら、どうしよ」(急に不安になる姉)



 何を今さら。



 「どうしよ、やってなかったらどうしよ。フルちゃんに悪いなー。あ、ご飯食べてなかったんだよね、やってなかったらご馳走するよ!3000円しかないけど(笑)」



 市民プール到着。エントランスの様子が見るからに怪しい。



 「あれ?なんか終わっちゃってる感じ?」

 「確認してきたら?」



 車を降りて中で片づけをしていた係の人とニ三会話を交わして戻ってきた姉。



 「最終受付は19時15分で19時45分までだってえ〜」

 「30分泳げるじゃん、泳いできなよ」

 「ええー、だってぇーん」

 「何?30分でもしっかり泳げばすごい運動量になるって豪語してたよね?」


 笑って誤魔化そうとしている。実際ホントに30分しか泳げないということになってメンドクサくなったようだ。

 当然、きっちり1500円分夕飯をご馳走になって帰宅。でも、見学した新しいジムはけっこう良いかも。春から通ってみようかな。


 日曜、姉は午前中に市民プールへ。私は5か月ぶりに美容室へ。パーマをかけた。半額ということだったから今回は我慢もしたけど、これ、たぶんカットが途中で終わってると思う。最初にこれくらいの長さで、って左サイドの一束をザックリ切られたのだけど、家に帰って髪を梳かしたらその時ザックリカットされたままの段差が残っていた。年配というよりおばあちゃんに近い人だったから忘れちゃったみたい…。自分で切って揃えましたよ。まあ、カールで毛先は巻いちゃうからいいの。


 本日はガブリエルが届いたという連絡がきたので仕事帰りに受け取りにホームセンターまで。満月だったのかな?ブルーの空に白く丸いお月様。受け取った茶色い苗に今夜の月のような純白のバラがたくさんつきますように。