オフの魔法使い

夢の種子



 ここがプライベートモードなっていた2月(なんでなっていたかというのは割愛、このページのちょっとした変化に気づいたフルマニアの方はおわかりでしょう、キャー!)、ウン年ぶりのオフ会をしてまいりました。お相手は魔法使いです。なので普段の悪さを全てお見通しなので、心臓抜かれないかとドキドキでした。


 魔法使いが仮の姿で現れるのは銀座のとある画廊でして、昼間の日の光が強い時間帯は苦手とのことで午後3時頃に在廊して下さることに。昼前に東京入りして浅草でうな重を頂いた後は隅田川下りなどして時間を潰し、途中のデパ地下で桜餅などを土産に買ってちょうどよい時刻に賑やかな表通りから一本裏に入り、狭い階段を上ったのでした。


 ギャラリーの中に入りますと、作品よりも先に目に入ったのは背の高い神々しいほどに穏やかなお顔をした魔法使いでした。事前に「貧相な田舎のオバサンが現れましたら、それがワタクシです」と伝えていたせいか魔法のなせる業なのか、すぐ私だと気付かれたようでした。その前に私が挨拶していたかもしれませんが。


 美しい色の洪水、というよりは春のさざ波か、そんな作品群を見て一生懸命感じたままの感想を言ってみますと「あれ、フルさんはよく絵を見るのですか?」等と言われ、ますます緊張してしまうのでした。その後人間界の美術系のお友達が次々見えたのですが、その中に別のギャラリーのオーナーがいらっしゃいまして、魔法使いがその方に「この方(フル)がね、ネットでバカ正直に出てた金額で私の銅版画(小品なのでそんなに高くない)を買ってくれたのですけど、申し訳なくて…」と話しておりますと、そのオーナーの方が「なら、もう一つ銅版画があったじゃない、あれを刷って差し上げたら?」「ああ!そうだ、そうしよう!あとでもう一つ違う作品を送りますから。額もたくさんあるからあとで額に入れて送りますね」と。私はと言えば、そのやりとりを目の前にして、えっ、えっ、そんな、とても嬉しいのですけど、いいのでしょうか?なんて、間抜けな返事をするばかりでした。


 その後近くのレストランでご馳走になってから帰宅。メールでお礼を伝えると、礼儀正しく上品さが漂っていた、なんていうおよそ普段の自分からは想像もつかないお褒めの言葉を頂き、私もやっぱり魔女、じゃなくてTPOを少しは考えられるように成長したのね、なんて思うのでした。


 魔法使いは嘘つきが嫌いと仰るだけあって、印刷機を引っ張り出すのも大変だったでしょうに一週間と待たず、素敵な額に入った銅版画が送られてきたのでした。中に入っていた手紙には、紙の端を切って額に入れたので、ということでもう一枚入っていたのですが、サインを忘れたからもう一度送って下さると…。



 そして再度送られてきた作品には、同じものではつまらないからと、版画に手彩色してくださったものが送られてきたのでした。なんだか有難すぎて、生きているといい事ってあるんだなあ、と、しみじみと感じ入ったりしたのでした。


 そんなこんなで今があります。明日は仕事です。その次は出張です。思うところはいろいろありますが、なるようにしかならない。仕事に限って言うならばただただ真摯に、そして人事を尽くす、というモットーを見失わないように。そのためには、まず驕らないようにしたい、な、と思ったりする今日この頃なのです。