『アレックス』(2002)DVD

監督:ギャスパー・ノエ


けたたましいサイレンの音、やがて怪しげなゲイ・クラブから腕をへし折られたマルキュスが搬送される。彼は恋人のアレックスをレイプしたゲイのテニアという男に復讐するため、親友でありアレックスの元恋人のピエールと潜り込み、血なまぐさい事件を引き起こす。どうしてこんなことになったのか、全てが逆回転で進んでいく。


数時間前、パーティを抜け出し一人で帰ろうとしたアレックスは、地下道でサドで変態のゲイ(テニア)にレイプされたうえ、顔面を蹴り上げられ地面に何度も叩きつけられ潰されてしまったのだ。更にシーンは、マルキュスとアレックスの愛の生活、これから自分の身の上に起こる不幸な出来事など知る由も無く、散水機の回る青々とし緑の草の上で昼寝しているアレックスの美しい寝顔へと遡る。ゆっくりと流れる映像に何か不安なものを感じるのは、最初に「知ってしまっている」からか。そして「時は全てを破壊する」というテロップで終わる。


なんとも残酷な映画だ。昔、付き合っていた人が「時間は優しい」と言っていた。まあ、時間が全てを解決してくれるという意味らしいが、確かに、そういうこともあるのかもしれないが、解決に至るまではべらぼうな時間が必要だ。が、崩れるのは一瞬。常に周りには危険が潜んでいる?いや、そういうことじゃないな。幸せな美しい時のままで時間は止まってくれない。時間とは非情なものだ。


ラストの草の上で昼寝というシーンでは、クリント・イーストウッドケビン・コスナーの『パーフェクト・ワールド』をちょっと思い出したり。これまでは映画館へ実際足を運んだ映画しか書いてこなかったんだけど、ちょっと衝撃を受けたので。これからはDVDで観たものも、区別せず書いていこうっと。