『バーフライ』(1987/DVD)


監督:バルベット・シュローダー 脚本:チャールズ・ブコウスキー
出演:ミッキー・ロークフェイ・ダナウェイ


バーに入り浸り酒に溺れながらも自らの魂は汚すことなく、与えられた人生を受け入れてきたアメリカの詩人、チャールズ・ブコウスキーの自伝的映画。


ブコウスキー酔いどれ伝説』(ニーリ・チェルコフスキー著)を読んでたら、その中にこの映画化について触れていて、そう言えば、昔付き合っていた男が『バーフライ』という映画を口にしていたことを思い出したので興味を持って観てみました。


映画の中に登場するヘンリー(ミッキー・ローク)はもちろんブコウスキーで(本人もちょっとだけ出演している)、ワンダ(フェイ・ダナウェイ)は出会ってから10年間生活を共にした当時のミューズであり最愛の女性、ジェーンだ。彼女は彼を追い出した2年後に酒に溺れ49歳(彼より10歳年上)で亡くなってしまうのだけど、映画の中ではそこまでは描いていない。が、それを予感させるものは随所にありますね。


バーで繰り広げられるヘンリーを巡っての上流階級の文芸誌オーナーの女性との取っ組み合い、それに勝利したワンダに「俺の女だ!」とキスをして、今度は自分の番とばかりにいつものようにバーテンのエディにケンカをふっかけ映画は終わる。


バーの外から中へ入っていくオープニングのカメラは、バーの中から外を映し出して終わる。


うーん、二人の濃密な関係を知ってしまうと、ちょっと物足りなさを感じてしまうのは否めない。ヘンリーの周りに集まってくる個性的というか魅力的な人物を多く配しすぎたためだろうか。個人的には道端で火を貸してくれるオジイサンがよかった。俯いてヨボヨボと二人の前に現れるのだけど、火を貸してほしいと声をかけられることによって、そのオジイサンはみるみる明るく変化する。これまで誰からも声をかけられることがなかった、もしくは人に頼られたことがなかったのが、ヘンリーに礼儀正しく接せられたことで誇りを取り戻したかのように。と、こんな風に回りの人間の生活もついつい想像してしまうのがいけないのかしら。