『妻よ薔薇のやうに』


1935年製作 P.C.L映画製作所(TV〓BS2)
監督:成瀬巳喜男
原作:中野実『二人妻』
主演:千葉佐智子、英百合子丸山定夫、伊藤智子


 イイ!昨日見た『めし』よりずっと面白い。役者も達者だし、時代というものは感じさせるけど、そこに生きる人間の感情の機微がうまく表現されていて古臭ささなどは微塵も感じない。これはジェラール・フィリップ主演の『肉体の悪魔』を観た時と一緒だ。何よりも主演の君子を演じた千葉佐智子が生き生きとしていてよかった。始めはいささか地味に見えたが、ストーリーが進むうち彼女はどんどん魅力的になっていく。とくに笑顔が美しい。彼女は日本のクローデット・コルベールだな。私にとって。

 田舎の家の中で、カメラは君子と父の愛人(お雪)とその娘、女三人の心模様を交互にうまく映し出す。そこに不在の父と息子、風呂につかり手拭いで風船を作るシーンを織り交ぜながら。異母弟のケンイチ役も(カバンを頭の上にのせて本を読みながら登場)子役ながら存在感がある。ラストシーンでの「人は皆、こころごころですもの」という母(悦子)の諦めのセリフが哀しい。
 知らない役者ばかりなので備忘録として配役を残しておこう。


 君子……千葉佐智子
 お雪……英百合子
 俊作……丸山定夫
 悦子……伊藤智子

 
 ああ、『浮雲』も観たいなあ。「お母さんの負けだわ」