午前2時50分
部屋の明かりを消し、ポケットにタバコとライターをしのばせベランダに出る。思いのほか外が明るかったのは目の前に建ったアパートの駐車場にある外灯のせい。以前広がっていた星空を見ることはもうない。
イヤホンから流れてくる音楽のボリュームを上げながら、そんな景色に背を向けてタバコに火をつけた。
深く吸い込む度に、共犯者がいれば少しは楽になっただろうか、そんなことを思う。
吐き出す煙りが魂のかけらなら
2本も吸えばたちまち眩暈がして立っていられなくなるのに、手摺りに寄り掛り空だけを見ようと上体をうんと反らして4本目を吸っていた。
本当に、罪なことをしてくれる。
誰が?
ワタシが、か。
最後に一息深く吸ってから灰皿に押し付けて火を消していた時、数本残っていたガブリエルの白い影が目に留まった。
顔を近づけて鼻からいっばいに息を吸ってみたが、あの甘いフルーツのような香りは既に失われていて、代わりにうっすらと苦いタバコの匂いした。