いざ銀座へ


 明日のPちゃんの小学校の卒業式で着る中学校の制服が震災の影響で配達が間に合わないという。なので、ワタクシ、避難してきた時の出で立ちのまま、愛するPちゃんのため銀座○越まで制服を受け取りに行って参りました!
 ○越の案内カウンターで、注文書の控えを出して引き渡し場所を教えてもらう。記載されていた住所を見て「わざわざ○○からいらしたんですか?!」と驚かれた。
 エレベーターで教えられた通り7階に向かう。降りると、なんかいきなり敷居が高い雰囲気のフロア。時計や宝石がディスプレイされてる。商品サービスカウンターには三人の黒スーツがいた。私はきょどった目つきで注文書の控えを取り出しながら、マスクも外さずに彼らににじり寄って尋ねた。


「あんのぉ、いまぁ、いっかいのあんないからぁ、ななかいのさ〜びすかうんた〜?にぃ、でんわでぇかくにんしてもらったらぁ、こっちによういしてあっからっていわれたんだげんどぉ〜」


 黒スーツの一人がちょっと驚きながら注文書の控えを眺める。やがてパァっと表情が明るくなりニコニコしながら、


「お客様、大変申し訳ございません。こちらは6階でして、こちらの商品はこの上の7階になります。エレベーターか、よろしければ後ろの階段をご利用下さい。真っ直ぐ進んですぐ左に曲がって頂きますとカウンターがございますので」


 私は顔の半分以上を覆っているマスクの上から黒スーツの目をしっかり捕らえながら聞いていた。すると黒スーツの顔がみるみる赤らんでくる。ふっ、おちたな。


「げげっ、ろっかいけよ〜、ごぉめんねぇ。てまぁとらせたねぇあんがとお」


 礼を述べた後、サッと踵を帰しすぐ後ろの階段を右手と右足、左手と左足を器用に交互に動かしながら振り返らずに上っていった。黒スーツはなかなかのイケメンで熟女を対象としたホストクラブだったらトップクラスに入るな、などと思った。ま、それでもワタクシが嵌まるようなレベルではなくてよ。(そもそもホストクラブになど行ったことがない)
 お土産に清月堂のお抹茶用の干菓子を購入。


 16:30だというのに既に退勤ラッシュ。大規模停電の影響と知る。制服を死守して2時間立ちっぱで電車に揺られる。車内で交わされていた会話に耳を傾けると、至って極普通の光景についての事柄で、日常と非日常が反転したような感じ。その中に、ホッとする自分を発見する。

19:15 任務完了。

 大喜びで興奮しまくるPちゃんと交渉に交渉を重ね、3秒チュウを10回で落ち着く。
 夜は「アメトーク」の再放送で大吉さんにうっとり。Pちゃんと一回目のチュウで二度うっとり。夢心地のまま眠りに。