深呼吸の必要


 ボスに昼食をご馳走になる。

 カウンターの向かいの畳席に座ると、隣の席に見たことがある穏やかな笑顔のオジサンが座っていた。店の常連同士であるボスと話し出したオジサンも私に気づき、あれ?と。以前働いていた大学の先生だった。同じ棟だったので、事務室で何度か顔を合わせたことがあったのだ。遅れてもう一人。私の隣に座ったその先生は、私が所属していた居室に技術職員のSさんを訪ねて何度かやって来たことがあるからすぐわかった。Sさんが言うには私と同い年だそう。

 生ものが食べられない私に配慮してくれた定食は、豪華というよりもボリュームが凄くて、途中、地震で店内にいた女性たちが脅えてざわざわしだしても、私は動じることなくただ黙々と食べ続けた。騒ぐほどでもないと思ったし(←こういう所が可愛いげがないんだろうな)何より残してしまうのがイヤだった。が、ウチの昼休みは45分しかない。お腹的にもいっぱいいっぱい。で、タイムアウト

 店を出てから「時間があればもうちょっと洒落た所にするんだけど悪いね」と、ボス。優しい。後から来たのにさっさと食べ終え、こちらに足を崩して投げ出していたお隣りさんを無作法だったなと思いながら、いつどこで知った顔に会うかわからないもんだとも思う。ひょっとしたら、これを縁というのかしら?なんてアホなことを考えてみたり。ただ世間が狭いだけ。だから、時々息がつまる。