ワイルドだぜぇ〜い


 昨夜は胃が痛くて吐きそうだった。夜8時過ぎに、走った実績がたった2分ではあんまりだと、せめていつもの(この2ヶ月サボっているが)ウォーキングコースを走ろうと、おニューのトレパンを穿いて飛び出したわけだが、やはり5分ともたず、歩いたり走ったりを繰り返して、約2.6キロを21分で。単純に計算すれば1時間内で走れるかなと思うも、ケータイは4.7km/hを示していた。きっと後半はもっとヘロヘロになってるはずだからギリギリかなあ、とにかく完走を目指すか、と、観念してお風呂に入っていつもよりずっと早めに就寝。

 7時起床。朝食をとって、持ち物を何度もチェック。ゼッケンとかRSタグは事前に郵送されているので受付とかはなく、当日は参加賞(Tシャツとかタオルとかプログラム)を引き換えて、自分のレースのスタート時間までに行けばいいだけ。私は一番最後の11:30スタートだから時間の余裕はあったけど、駐車場がないということなので、車で行けるところまで行ってみるかと9時過ぎに家を出た。

 最高のお天気。でも気持ちはドンヨリ。せめて桜が満開だったならなあと思うも、もうここまで来たらなるようにしかならん、楽しもう!と気分を切り替えて車を走らせていると会場が近づくにつれ迂回の文字が多くなる。車を停める所が見つからなかったらどうしようと思っていると臨時駐車場の看板発見!

 60代後半のランニングスタイルのおじいさんが出てきた。前には同年代とおぼしき女性も。声をかけてみると同じ5キロレースに参加。サボっていて3週間前から走り出したばかりだと言う。つまり3週間は走ってるんですね。あー、何も言えねぇ。

 会場に着くと、もう最初にスタートした組がゴールしていて完走証をもらう行列が中央広場を埋めていた。


 なんでこんなことになったんだっけ…?だいたい私は短距離タイプなのよ、マラソンなんて中学3年生の時2キロ走ったのが最後じゃない!なのに、ああ、なぜ!?


 それは私の好奇心のせいです。でした。たまたま見たチラシに普段は車しか走ることのできない海の上を渡るバイパスを大勢のランナーが埋め尽くしているのを見て、眺めよさそう、私もここをゆっくり歩いてみたいなあ(決して走ってみたいなあ、ではない)、と思ったからなのでした。

 時間が迫ってきて、ウエアに着替え荷物を預けスタート地点に向かうと、皆、トレーニングを積んできたランナーにしか見えなくて、空を仰ぐと左右からやっと膨らんだばかりのたくさんの蕾をつけた桜の枝がブルーの地に古典的な柄を描いていた。枝に絡まっている淡いピンクの3つの風船はまるで風にそよぐ花びらのようだ。なんだかワクワクしてきた。


 とにかく、前へ進めばいいんだ。


 目の前にいた、普段から走りこんでいそうなおばあさんについて行こうと思ったのに、あっという間に見えなくなってしまった。が、大勢で走っていたからか、いくらゆっくりマイペースで走っていてもすぐに歩いてしまうんだろうなと思っていたのに、なんと3キロ地点を過ぎても歩くことはなかった。バイパスに出てからは折り返し地点を早々と通過して戻ってくる人たちと行き交う。途中立ち止まって写真を撮っている人たちもいた。でも景色なんて眺めていられない。鼻から息を2回吸い、口から2回吐く、このペースを乱したくなかった。折り返し地点はまだずっと先に見える。それでも前に進んでさえいれば、それは手の届く所にちゃんと近づいてくるんだ。このまま立ち止まらずにゴールしたいなあ、と欲が出てきたりもする。が、先を見ればまだあんなにあるとわかって気が遠くなるし、後ろは自分が一番最後だとわかったら一気に気後れしそうでやはり怖くて見れない。とにかく目の前だけを見ながら走った。

 けど、正面から受ける海風と緩やかな登りでとうとう歩き出してしまった。さっき抜いた人たちに追い抜かされていく。その背中を見ながら、自分のペースで行くんだ、ここで無理をして貧血を起こしてしまったら元も子もない、完走するためだ、と言い聞かせてできるだけ大股で歩いた。

 やっと沿道に出ると「あと、500!ガンバレ!」と一際大きな声援。あと500かあ、と給水所の水でカラカラになってた喉を潤し踏ん張った途端に坂。もぉ。結局、3回くらい歩いたかな。でも、ゴール直前、ずっと目の前を走っていた男の人をラストスパートで抜かしちゃった。

 ということで、めでたく目標の完走を果たしました!タイムも37分代、スタートラインを越えてからのネットタイムだと36分代だから、私にしては上出来じゃないか。

 こんな感じでレースは無事終了。ただ走り終わってしばらくしたら体の関節がガタガタになっててビックリした。駐輪場に戻る途中、和菓子屋さんを見つけて桜餅やかりんとう饅頭、海老煎餅などを買いながらゆっくり歩いた。筋肉痛はきっとこれから、明日がちょっと心配だぜぇ〜い!