あじさい路探訪前夜


 ウィークデイの睡眠不足を考えると土曜日からあれこれ動き回るのは得策ではないので、午後3時に東京入りしてホテルに直行し20時からの映画の時間までくつろぐことにした。なんたってリラクゼーションルームですからね。


 陽射しがそんなに強くなかったのは幸いだった。にもかかわらず、駅からホテルまで10分も歩くと全身から汗が噴き出す感じ。チェックインを済ませて11階の角部屋のドアを開けると、いきなり大きなベッドが飛び込んでくる。狭い部屋に対して比較的広くて明るいバスルームからはスカイツリーが見えた。


 早速シャワーを浴びてベッドに転がり込む。全身コースを選択してスイッチを入れると、足元からマットレスが盛り上がってきてその突起部が徐々に肩まで上がってきた。ま、早い話がマッサージベッドですね。日頃の疲れを癒すべくテレビを見ながらごろごろしてたらアッという間に3時間も経ってしまった。


 慌てて身支度。この時期になると顔に出るアレルギーがこれまでになく酷いことになっていて、いつもは片方の瞼だけなのに、左の頬には500円玉位の大きさで肌が赤く爛れて盛り上がっているし、その他にも額やこめかみ、瞼と、大小様々で顔だけで8か所ある。知らない人がこの顔を見たらなんか悪い病気でも持ってるんじゃないかと気味悪がられるだろうな、と思いつつ、しゃあない、毎度のことだし、と開き直ることにした。ホントはこんな状態の時はあまり出かけたくないのだけど。映画もやめようかな、と、ふと頭をよぎったりもしたが、気分を切り換えるにはまず行動だと出かけることにした。


 昼食を食べていなかったので、ホテル近くのファミレスでヒレカツ定食をガッツリ頂く。上あごを火傷しながら時間をかけて完食。時計を見るともう19時だった。あれ?間に合うのかな、と不安がよぎる。まあ、ホテルを出て食事を先にとった時点で立ち見は覚悟してたんだけど。


 メトロに乗って渋谷着。ちっくしょう、出口間違えたぜ。私はなぜか南口と東口をいつも間違えて覚えてしまう。辺りはもう暗い。適当に歩いている時間はなかった。19時45分だぜい。信号待ちしていたタクシーに乗り込み、「近くて申し訳ないんですけど…」と。優しい運転手のおじさんがこの辺りだと思うんですけどねえ、と、店の前にいた女性に声をかける。知らない、との返答にゆっくりと3mも車が動いたその先に現れたのはまさしくその場所。5分前に到着。間に合った!ま、立ち見ですがね。


 コンクリの床に配られた小さい座布団を敷いて座っていると、左足首が変に攣ってしまって冷や汗が出たりお尻が痛くてもぞもぞしたりしてしまいましたが、それでもカサベテスの『ラブ・ストリームス』は観る価値がありました。ホント、つくづく出かけてよかったと。終映後、お尻をさすりながら明るくなった場内を見渡すと、痩せ型筋肉質で長身の短髪銀縁眼鏡というワタクシ好みの殿方が。これが運命の恋の予感?(←バカ)

 
 つか、占いの読み過ぎだと思う。


 鎌倉編へ続く。