山の思い出


 5月の終わり、ネットサーフをしていて昔の仕事関連のサイトを見つけ、そこでとても可愛がってくださった方が昨年10月に亡くなられたことを知った。慌てて元同僚の友人に電話してみると、知っていたがお別れ会には参加できなかったとのこと。新聞に3日連続で掲載されたという大ボスの手記にはその方がいかに心血注いで貢献されてきたかが書かれている箇所があった。存命中、直接ご本人からもその時のエピソードを笑い話として聞いたことがある。


 今年こそ行こうか、あの山村へ。


 そんなことを思っていたら、今日もう一人の元同僚から電話がかかってきた。話してるうちに、ひょっとしたら自分も8月に行ってるかもしれないという。お墓がどこにあるのかも訊いてみてくれるという。当時は日々いろんなことがあって本当に大変な忙しさだった。けど、不思議とあの地に嫌な思い出は一つもない。宿舎に帰る道すがら、見上げた満天の星、よし、明日も頑張るぞ、と笑顔が蘇る。落ち込んでる暇なんてなかった。


 お金が無かった時はね、みんなで食パンを分け合って齧ったり、その辺から山菜を採ってきて食べたりしてたのよ。


 私、山菜採り得意です!


 笑いながら、凍った雪の残る山道を二人で事務所に向かったのは新緑の時だったか。