またまたヘンてこな夢を見た


 洒落た三階建てのビル。その二階全てが住まいになっていて、突き出したラウンジはガラス張りになっていた。豪奢な濃いブラウンのコーナーソファに座って、私は一階の店舗に吸い込まれていく人を眺めている。冷めた視線の向きを変えると、反対側のソファに憂鬱そうな顔をした姉が座っていた。しばらくするとそこへオールバックにした白髪頭、いやらしくしか見えないコールマン髭を蓄えた、固太りだが身なりのいい初老の男がやってきた。このビルのオーナーで、どうやら姉の夫のようだった。夢の中の姉の外見は確かに今現在の姉なのだけど、その男性とは初婚なのか再婚なのかもよくわからない。が、晩婚であったことに間違いはないようで、子どもの存在が全く感じられなかった。二言三言言葉を交わして夫を見送った後、姉はますます顔を曇らせ、地味な色の服がいっそう陰鬱に見せた。


 「Bちゃんは、好きでもない人と結婚して平気なの?」

 「だって、しようがないじゃない…」


 どうやら私たちは二人きりの家族のようで、私は金持ちと結婚した姉の家に居候させてもらっているようだった。訊いた自分に嫌気がさして、堪らず部屋を飛び出しエスカレーターで一階の花屋へ向かった。が、花に癒されることもなく、姉の言葉が頭から離れなかった。すぐさまエレベーターで姉のところに戻ろうとしたのに、なぜか着いたところは三階の高級レストランの前だった。


 「いらっしゃいませ、ご予約ですか?」

 「あ、すみません。階を間違えました。下に住んでる者です」

 「ああ、オーナーの。いつもお世話になっております」

 「いえ、私は何も。すみません失礼します。あれ、エレベーターは?」

 「そこを曲がった突き当りにありますよ」


 言われるままに歩いていくと確かにエレベーターはあったが、さっき降りた場所とかなり位置が違う。その突き当りを右に曲がると複数の企業のオフィスが並んでいた。私は透明人間にでもなったかのように、その中の一つのオフィスに勝手に入り込み、ちょうど就活でそのオフィス群を見学に来ていた女子学生の一団に紛れ込んだ。

 上座に置かれた大きなデスク、銀縁の眼鏡をかけ気難しそうな顔をしたがたいのいい男性がひとり、目に飛び込んできた。他には誰もいない。よほど忙しいのか殺気立っている。部屋を出ると、学生の一人が我慢していたのを吐き出すように言った。


 「ね、さっきの人、伊東四郎に似てたよね!」

 「そう、伊東四郎!やっぱり似てるよね!」


 なんだか嬉しくなって、いつになく声が弾んでいた。するとその学生のうちの一人が困ったような顔をして、私にこう諭してきた。


 「お兄ちゃん、既婚者だから不倫になっちゃうよ?」

 「え?あ、ああ、うん、大丈夫だよ」




 あまりの展開にびっくりしてここで目を覚ましたのだけど、意味がわからない。たぶん、発言小町の読み過ぎだと思う。