プチ旅行顛末記-2


 旅館からは1時間おきに駅までの送迎バスが出ていたけど、そのすぐ裏の要害山へは30分くらいで登れるときいて、折角ここまできたのだから登ってみようと思いバスの時間に遅れては申し訳ないので断ることにした。武田神社までも歩いて30分くらいだど聞いていたし、天気もよかったのでのんびりウォーキングしようと。


 んが、私は大事なことを忘れていた。比叡山の時のように靴が合わず痛いということはなかったが、7cmヒールのブーツである。7cmなんて普段でも滅多に履くことはない。なのに今痛くなければなんとかなるだろうという甘い考えがいつもつきまとうダメダメな私である。とにかく周りの景色をゆっくり楽しみながら時間を気にせず進んでいった。独り言が多く、1年前の平泉に行った時のことを思い出した。あの時も誰もいない雪深い遊歩道を大変な思いをしながら歩き切ったのだった。


 茶色の山道に時々落ちているムラサキシキブや柿をそのまま小さくしたような黒く熟した実、枯れたままその形状をとどめた名も知らぬ花、珍しい霜の結晶、小鳥の巣。そしてやっと現れた平坦な空間と石碑。殺風景だなと思いつつもカメラにおさめようと土手に上がった時、山と山の間から富士山を発見した時の興奮。山に登らなければ全部知ることはなかった。山は上る時より下る時の方が大変だということも。


 ブーツ。7cmヒールのブーツが私の唯一の敵だった。自称山ガの姉の「急な下り坂を下りる時は横向きになって」という言葉を思い出し、慎重に一歩ずつ降りて行った。途中、ポールを二本を使って上ってきたおじいさんと出会い挨拶。


 どこまで登ったの

 そこの石碑のある要害山までです

 ○○山までは行かなかったの?

 旅行の途中で、今日帰らないといけないんです

 よく山には登るの?

 そんなに登らないんですけど足は丈夫なので(笑)
 折角ここまで来たから登ってみようと思って

 そう、じゃ気をつけて
 

 登山口に戻った時には汗びっしょりでもう一度お風呂に入りたいくらいだった。とにかく疲れたので、旅館に戻ってフロントの方に断わって少し休ませてもらうことにした。15分ほどいたろうか。館内の自販機で水を買いフロントの方に礼を言って旅館を出ると少し先の小さな庭園内に可愛い柴犬がいたので少し遊んでいこうと近寄ったら見事に吠えられ、ちゃんと番犬してるねえ、なんて言いながらやっと出発したのでした。


 本当にお天気に恵まれてあれこれ写真を撮りながら意気揚々とウォーキングしたのですが、この頃から少しずつ足の裏がジンジン痛み出してきていい加減どっか座れるところはないかなーと思いつつ武田神社到着。平日月曜ということもあり観光客はまばら。参拝し、いつものように姪っ子たちにお守りを購入。女みくじというのもひきますとなんと大吉ですべてがよしという感じ。中に入っていた漢字の一字はワタクシの今後の課題となりそうです。


 神社の向かいのお店でお土産を買って、あとは武田通りを歩いて途中のお店でお昼を食べようと思っていたのに、ちょっと歩いたら武田信玄公のお墓の看板が目に入り、ここまで来たんだからお墓参りしないとダメでしょ、とまた横道に入ってしまうあたりがワタクシたる所以だったりするわけで。途中の立派そうな奥方のお墓には寄らなかったのだけど、信玄さんのお墓は住宅地の中に普通にあってちょっとびっくり。きっとそれだけ地元の人には親しまれているのでしょう。


 さあ、武田通りに戻りましょうか、と思うもなかなかそうは問屋が卸さずって感じで山梨大学が見えてきたところでやっと武田通りにでたのだけど、今度は喫茶店が見つからず。大学のそばのメインストリートなのになぜカフェが一つもないんだ、と毒づき足の痛みに耐えながら歩いていたら甲府駅についてしまったという。足が痛いのとお腹が空いたので駅ビルの和幸で食事。少し活力がもどったので、帰りのスーパーあずさの指定をとってから舞鶴公園へ。ああ、あの山からここまで歩いてきたのかあ、このブーツで、と思うと健脚過ぎるのもどうかと考えたり。


 スーパーあずさの車窓から見えた景色は何年か前に見た景色で、チュウオウフリーウェイ♪なんてフレーズが頭をよぎったりしましたが、疲れてすぐウトウトしてしまいそのくせ足はジンジン痛いので、コートで足を隠してブーツを脱いでくつろいでしまいました。新宿に到着するころには浮腫んでブーツのファスナーが上がらないんじゃないかと心配したけど無事履くことができ、そのまま何事もなく帰還。


 なんだかんだと今回の旅でもいろいろやらかして、清水でお世話になった方にお菓子を送ったりしたら、本日そのお礼の電話を頂いたりして旅行記が完結してないことを思い出したりたのでした。来年はもっと年相応の落ち着いた旅を目指そうかしらん、とか。