『キル・ビル vol.1』(2003)

監督:クウェンティン・タランティーノ


モノクロの回想シーン。リンチをうけ息も絶え絶えな花嫁。懇願する女の頭に、容赦なく銃弾を撃ち込む冷酷な暗殺団のボス、ビル。


シーンは一転して変わり、派手な車がある家の前に止まる。降り立ったのは、命をとりとめた元暗殺団の一人、ブライド(ユマ・サーマン)。出迎えたの4年前、彼女にリンチを加えた女の一人、ヴァニータだった。平凡なぬくもりを感じるその家で、突然、死闘が繰り広げられる。


が、ヴァニータの幼い娘がその戦いを中断させた。リンチを受けた時、ブライドは身重だったのだ。「子供の前では殺さない。」そう告げるブライドに、今は普通の主婦になったことを告げて許しを乞うが、「私に欠けているのは理性じゃない。慈悲と寛容よ。」と切って捨てられる。不意をついて襲い掛かったヴァニータの胸をブライドのナイフが貫く。異変に気づき、床に血を流して倒れている母親を見てしまった幼い娘に、ブライドは語りかける。「こうなってしまったのは、あなたのママのせいなのよ。でも、大人になってどうしても私が許せなかったら、待ってるわ。」復讐リストに二つ目の消し線が引かれる。残りは3人。


時間軸を自在に操り、現在、過去が入り乱れる。それは時間の流れを加速する。先に消された一人目のオーレン・イシイ(ルーシー・リュー)との戦いがVol.1の本編となる。


コレだけ読むとすっごいシリアス・ムービーだけど、そこは日本ヲタのタラちゃん。違います。4年間昏睡状態で眠り続けるブライドの刺客として、やってきた片目の殺し屋、エル・ドライバー(ダリル・ハンナ)が口笛にのって登場するシーンなど、サイケでコテコテなのだけどカッコイイ!白い服に合わせた白いアイパッチ。洒落てるねぇ。なんでもアリアリの世界観で作った作品なので、リアルさがどうとか細かいこと言うのは無粋というもの。そんなメで観ちゃあいけません。かくいうワタクシなど、カラー豪華保存版といったアメリカン・コミックを観ているような感覚で観てましたもん。実際にオーレンの生い立ちなどは日本製アニメで描かれている。だからなんでもアリアリだって。


刀鍛冶の千葉真一が喋り出すと、もう失笑。なんであんなにもったいぶった言い回ししかできないの?しかも重みがない。(ああいう、言い回しは個人的に散々聞いてきたので下手なのがすぐわかる)彼が何か喋るたびに「ぷっ」と吹いてしまうワタクシ。場面が東京に変わって、オーレンの配下、ゴーゴー・ユウバリとクレイジー88との対決シーンでは、腕や頭が吹っ飛び血飛沫が水芸のように吹き上がる。こんな残虐なシーン、ワタクシ大キライです。普段なら目をつむって、耳を塞いで縮こまってしまいます。なのに、なぜでしょう?ゲラゲラ笑ってるの。や、実際には私以外のヒト(20:00からの回で約20名)は微動だにせず固まっていたので声は出しませんでしたけど。一番後ろの真ん中の席に座ってたもんで、人目もはばからず肩を揺らし身をよじって笑い転げておりました。選曲も激しくハデ。もうふざけてるとしか思えない。ここまでやられると逆に気持ちイイ!!タラちゃんのヲタワールド全開のこの作品を楽しめるか否かは、ブライドが最初に「ない」と言いきった「寛容さ」が決め手かもしれない。


残りの3人の復讐劇『キル・ビル Vol.2』は2004年のGWに公開される。こちらも楽しみだ。