『クジラの島の少女』(DVD)


2002年 ニュージーランド
監督:ニキ・カーロ
出演:ケイシャ・ キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・パラテーン、クリフ・カーティス


出生の時に双子の弟と母親を失った少女パイケア。その名は、かつてたった一人でクジラに乗りこの島に辿り着いた祖先の名だった。が、その名を孫娘につけるのを族長である祖父は快く思っていなかった。


あまりにも厳格なその性格故に、後継者となるはずのパイケアの父親やその弟は家を去っていた。パイケアに愛情を注ぎながらも、指導者たる次期族長である男子を育てるため、祖父は島の少年たちを集めマオリ族の伝統を教え始める。祖父を敬愛していたパイケアは、少年たちが学んでいた剣術をこっそり叔父に習うも、女が族長になることをよしとしない祖父にとっては腹立たしいだけだった。


そしてある日、少年たちを海に連れゆき、いつも大事に首から提げていたくじらの歯で作ったお守りを最終試験だと言って海中に投げ、取ってくるように命じる。が、誰一人それを持ち帰ることはできなかった。悲嘆に暮れる祖父の姿を見たパイケアは、祖父がお守りを投げた場所を叔父から教えてもらうと、ためらいなく海中に飛び込むのだった。


なんとか祖父に認めてもらいたいパイケアだったが、祖父の心は閉ざされていくばかり。夫の頑固さに辟易し、傷ついていくパイケアの幼い心を優しく慰める祖母。パイケアの学芸会の日、祖母が来ないと言っても来てくれると信じていた祖父がいないことに落胆し、少女は涙ながらに内緒にしていた祖父に捧げるスピーチをする。少女は誰よりも深く祖父を理解していたのだ。


祖父はパイケアの信じるように確かに学校に向かおうとしていた。が、海岸に異変を感じ、そこでたくさんのクジラが打ち上げられていることを知ったのだった。


「誰のせいだ」


悲嘆に暮れる祖父を見て、パイケアはなんとか自分も力になりたいと思うも、クジラに触ることすら拒絶される。まるで、すべての原因が彼女の誕生であったかのように。


そして、なんとか海に戻そうとしていた村人も力尽き、引き上げようとクジラの元から去り始めた。絶望したしたパイケアは、そっとクジラに近づき、祈り、そしてクジラの背に乗った。右足で軽く合図すると、ぐったりしていたクジラは大きく尾ひれを蹴り、向きを変え、海に戻っていった。パイケアを背に乗せたまま。


そうとは知らず黙り込む祖父に、パイケアが海中から持ち帰ったクジラの歯のお守りを祖母は怒りを込めて手渡した。


「誰が取ってきた」

「わからないの?」


家々に戻ろうとしていた村人の中に、パイケアの姿がないことに気づいた叔父が彼女の名を大声で叫ぶ。そして村人たちは、クジラの背に乗り沖に向かっていくパイケアの姿を目撃するのだった…。