『ヒストリー・オブ・バイオレンス』


2005年 アメリカ/カナダ
原題:A HISTORY OF VIOLENCE
監督:デビッド・クローネンバーグ 
出演:ヴィゴ・モーテンセンマリア・ベロエド・ハリスウィリアム・ハート


ある事件をきっかけに街のヒーローとなった善良な男の過去が暴かれていく。優しい夫であり二人の子どもの父親であるトムの隠していた過去の凶悪な姿であるジョーイが、家族を守るために再び牙をむく。


結婚して既に高校生の息子までいるというのにラブラブなトム(ヴィゴ・モーテンセン)とエディ(マリア・ベロ)。この幸せが信じられないというくらいに、ウットリと夫を見つめ恋に落ちた瞬間を語る妻に、「君の目を見てすぐわかったよ」と。こんな絵に描いたような夫婦いるんかいとか思ったりも。そんな矢先にトムの店に強盗が押し入り…。


ブロークン・フラワーズ』の時も感じたのですけど、映画的ご都合主義がココでも見受けられましたね。『ブロークン…』の時は、いくらネット好きでもハッカーのような真似事などとてもできそうにない隣人の男がビル・マーレー演じる男の過去の女たちの現在の居所を突き止める、なんてのはアメリカの個人情報がダダモレにでもなっていない限り無理なお話だと感じたわけで、今回は凶悪犯をやっつけて一躍街のヒーローになりマスコミが家までやってきたというのに、そんな男が事件後間もなくギャング3人(エド・ハリス、他)に襲われまたしても返り討ちにしてしまうのに、こんなおいしいネタにマスコミが全く喰いつかないなんて、と思ってしまうわけでありまして。まあ、そんなカタイこと言っていたらお話は進まないわけですから、だからこそ虚構はカッコイイなあ、なんて思ってしまうのでした。


それにしても、『ブロークン…』ではティーン・エイジャーの若々しい裸体があられもなくヘア丸出しでスクリーンに映し出されたのに対して、今回のマリア・ベロのソレにはボカシが入っていました。さて、その違いは?大胆なのかわかりませんが、それに組み込まれた「愛の交歓」シーンてところでしょうか。そう言えばR指定とかありましたっけ?あの程度で?あ、いや、青少年にとってはそこに「愛」があろうがなかろうがその行為自体のインパクトの強さだけが脳裏に焼き付いてしまうのでしょうからヨロシクない、とかね。なんとなく哀しいコトです。


愛がなければ、全て虚ろなものなのに。


主人公もソレが十分わかっていたのでしょう。自分を殺そうとしたギャングのボスである兄(ウィリアム・ハート)一味を皆殺しにして帰ってきたトムに、幼いながらも家族がよくない状況にあることをを察知した娘が無言で夕食のための皿を差し出します。母親は俯いたまま。次に息子がパンののった皿を父親に勧めます。そしてついに、互いに瞳に涙を浮かべた夫婦は向き合います。無言のままの家族の夕食シーンで幕は閉じるのでした。


「君の目を見て、すぐわかったよ。」