休日のメモ


映画を観終わった後、目の前の信号がちょうど青になったので反射的に渡ってしまった。駅に向かうバス停も反対側だったし、昔通ったこの通りも反対側をよく歩いたものだった。考えてみると、常に「反対側」を歩いていたような気さえする。そして自然と私の足は駅ではなく懐かしい古巣へ。中庭の芝は緑が美しく、が、そこへ一人の汚いカッコをした若者が。いかにも稽古帰りの役者というわかりやすい出で立ちで、変わんないなあ、と笑ってしまった。


一角にあるミュージアム・ショップでいろいろと物色するが、どれも高価なものばかり。その中で、中央に小さく"Bonjour"とだけ書かれたポスト・カードを見つける。ふと、音信不通になってしまったあの人に送って(贈って)みようかしら、などと考えたけど、いたずらに気分に任せてそんなことをしてもきっと迷惑がられるだけでしょうからそっとしておくことに。いっそ忘れてしまえればいいのに、と、手にとったカードをそっと元に戻した。


昼間とは打って変わって、夕方にはだいぶ涼しくなったので、バスには乗らずそのまま駅まで歩くことに。駅ビルのそれなりに名の通った小洒落たカフェに入り、電車の時間までやり過ごすことにした。駅前の様子がバカみたいによく見えるテーブルについて、カフェオレのアイスとモンブランをオーダーする。ロータリーにはたくさんのタクシーが整然と駐車していた。そろそろ夜の賑わいをみせる時刻なのか。それにしてもテーブルがガタガタいうのはナンなんだ。それに今日はじめて口にするのがパサパサのケーキだなんて。これで一切れ630円とはいったいどういうことだ。


そうだ、さっき作ったポイント・カードの630円を使って日焼け止めクリームを買おう。この程度で機嫌をなおさなきゃとにかくやってられない。


あ、タクシーが流れ出した。


そろそろ私も動こうか。あーあ、1,260円もココで使うなら、ちゃんと夕食でもとればよかったな。オシャレに生活するってのはお金がかかるもんだ。オシャレじゃなくてよかったな。


と、喫茶店に一人で入り、手持ち無沙汰で始めたメモのペンをテーブルにそっと置いて、残りのカフェオレを一気に飲み干した。