すれちがう愛情


こうして小さな王子さまは、愛する気持ちがおおいにあったにもかかわらず、じきに花のことを信じることができなくなった。気まぐれなことばを真に受けては、とてもみじめな気持ちに落ち込んでいた。
「あの花の言うことを、ぼくは聞いちゃいけなかったんだ」


(中略)


「ぼくはあのころ、なんにもわかっていなかった!ことばじゃなくて、してくれたことで、あの花を見るべきだった。あの花はぼくをいい香りでつつんでくれたし、ぼくの星を明るくしてれたんだ。ぼくは逃げ出したりしちゃいけなかった!あれこれ言うかげには愛情があったことを、見ぬくべきだった。花って、ほんとに矛盾してるんだね!でもぼくはまだ、あまりに子どもで、あの花を愛することができなかった」


(中略)


「そうよ、わたし、あなたを愛してる」花が言った。「知らなかったでしょう、あなた。わたしのせいね。どうでもいいけど。でも、あなたもわたしと同じくらい、ばかだった。幸せになってね……そのおおいは置いといて。もう、いいの」


星の王子さま』(河野万里子訳)より