エリック・ロメール・ナイト


『満月の夜』
1984年 フランス
出演:パルカル・オジェ


 『月の輝く夜に』の頃のシェールをフランスらしくちっちゃくしたようなヒロイン(あ、それをいうなら逆か)が、もてそうにない不細工な男ばかりを相手にして「愛されすぎて…」って、なんか笑っちゃう。オードリー・ヘップバーンを意識してるのか否かはしらないが、彼女を知ってるこちらから見れば、なんとも痛々しい老け顔のパスカル・オジェ。せめて下のアイラインは引かなきゃいいのに、と思う。が、彼女にとってあの声とフランス語の響きは武器だと思った。撮影後に病で亡くなってしまったそうだが、彼女の作品はこれしか知らないので興味ない。まあ、アムールの国、おフランスらしい映画。


緑の光線』 
1985年 フランス
出演:


 なんつーか、やっぱりウザイ女の話に変わりないな、と醒めた目で。(笑)
 なんでこの映画が苦手かと言うと、恋に破れ自己憐憫に浸っている姿ほどイタイタしいものはないから。そういう経験のある女性にとっては、むしろ一番知られたくない(客観視されたくない)恥部(少なくとも私はそうだ)なわけだ。それをこのヒロインは誰彼かまわず曝しまくり、そういう自分自身にすら陶酔しきっている。私はそんな軽い女じゃないと言いながら、タイプの男が現れれば尻尾をふり本能のままに行動する。こんな風に生きられたら単純で楽じゃね?というフィクションに対する羨望。それを女性心理を細やかに表現した見事な作品だとか評価している男性に対する不快感。
 初めて見た時抱いた不快の正体は、こんな風に描かれてしまったことに対する怒りだったのだな、とか。私も大概懐の小さい女であることよ。


『レネットとミラベル 四つの冒険』
1986年 フランス
出演:ジェシカ・フォルド


 痩せて美しくなったスカーレット・ヨハンソンと更に顎が強化された貫地谷しほりが共演しています。嘘です。
 駅構内でお金をせびっていた女性は『緑〜』のヒロインでしたね。その昔一人でパリに行った時、現地のモン・サン・ミッシェルの日帰りバスツアーに飛び込んで夜の11時にオペラ座前に着き、そこからメトロで東駅を出たところで、映画と全く同じことを体験いたしました。軽くウェーブのかかった黒い長髪を揺らし目の前に現れた長身のイケメン君にフランス語で「2フラン持ってない?」と聞かれたのですが、私は「ジュ ヌ パルレ パー フランセーズ(私はフランス語が話せません)」と映画と全く同じ台詞を発したのでありました。英語でまた繰り返されたのですが「ノン」とお断り。あたりは真っ暗で人影もありませんでしたからね。夜のメトロは妊婦でさえ強盗に会うと、帰国してから読んだガイドブックに書いてありましたわ。
 で、映画の方はというと初っ端からニヤニヤ話しかけてくるミラベルに愛嬌のある田舎娘というよりも、不気味なサイコ娘のニオイを感じとってしまったりして「なんかコワッ!」と思ったりしたのですが、血なまぐさい事件は何も起こりませんでした。事件と言えば万引き女性をレネットが逃がしてやったエピソードくらい。で、そこでの二人のやりとりには、なんか下手な役者が頑張っちゃってるエチュードを見てるみたいな不安定な空気が。よくわからんのですが、これってもしかして脚本とかねえんじゃねえの?と。それは『緑の光線』のヒロインの自分語りのシーンにも感じたのだけれど…。
 あと、『緑〜』のオープンカフェでバカンスについておじいさんやタクシー運転手が語っているシーンや、『レネット〜』のお隣の農家の人とのおしゃべりのシーンは、完全に素人にインタビューしてるのを繋ぎ合せただけだよね?だって主役との関係性がとってつけたように希薄(嘘っぽくて)でチグハグなんだもん。何これ、実験映画?とか思ってしまった。唯一いいなと思ったのは、画廊の店主。ホントにいそう。


『パリのランデブー』
1994年おフランス
出演:


 これをオサレっていうんでしょうか?どうでもいいです。結婚生活を維持するためには愛人はかかせないエッセンスのようにとらえているアムールの国のお話ですから。
 ただ、全編に流れるパリの景色が懐かしくて(過去4回行ったことがあります)、夜のエッフェル塔から眺めたシャイヨ宮の圧巻の眺め、ベルサイユに行くためC線に乗り換える途中で見た科学館の銀色の球体、唯一木製のポン・デザール(芸術橋)、お気に入りのチェイルリー公園の緑のベンチ、ポンピドーセンター前の屋台の焼き栗の不味さ、移動遊園地、モンマルトルの坂道や階段、洗濯船、ラパン・アジル、白亜のサクレクール寺院セーヌ川の辺、バトー・ムーシュ、白鳥の遊歩道、迷いついて入った植物園、サンジェルマンのカフェ、ユシェット座で観たイヨネスコの『授業』、などなど夢想しておりました。
 なんだかんだ言っても、それらをひっくるめて、あのパリ特有の自由な空気が私はとても好きなのです。ということで、映画は殆ど上の空でした。(笑)