ポットの湯気の温もりに


 土曜日に比べ日曜日はだいぶ涼しかったので、山の麓のキャンパス見学は比較的楽なはずだったのに、それまでの猛暑と求職中(一応ね)というのも手伝ってすっかりインドア派になってしまったワタクシは一人汗だくだく。ちょっと移動しちゃ、「イチゴのかき氷をくだせえ」と高校生に絡むのでした。
 来年ココの中等部を受験する予定の我が最愛の姪っ子Pちゃんは、「さっきのお兄さんたち、私たちのことカワイイネって言ってたね」と、お友達のYちゃんとまんざらでもなさそうにガールズトークしていたので、参加しようとしたら見事にはじかれた。いじけている私を見て、お疲れモードだった姉妹が口々に喋り出す。


姉 「もう、すぐ精神年齢が一緒になっちゃうんだから」

妹 「永遠の二十歳とか言ってるんだよぅ」(Yちゃんのママに呆れたように)

私 「違うよ。永遠の15歳だよ」


 ぎょっとして目を丸くするYちゃんママ。やた、これでYちゃんママのハートも鷲掴み間違いなし!そして、キャンパス内をK太がくるくる回転しながら歩いてなくてよかったネ!と、姉を励ます気配りも忘れない姉妹思いのワタクシ。
 見学会終了後、キャンパスの裏山の展望台まで車で行ってみた。が、景色はガスがかかっていて残念なことに。運動部のコたちはランニングでここまで駆け上がるというから、根性なしのK太が帰宅部になるのも無理はない。
 Yちゃん親子と別れ帰りにお茶した時、姉に筑波山に連れてけメールの返事がまだきてないがどうなっているんだと詰め寄ったら、山小屋一泊で福島の安達太良山に登りに行こうと急にハードルを上げられた。山小屋一泊なんて想定外だお。妹も筑波山でいいお、とあまり乗り気ではなかった。実はこの女(姉)、息子の学校の文化祭というキャンパス見学の前日に、一人で筑波山に登りに行っていたのだ。で、ちょっと物足りなかったらしい。このように、我々初心者のことは完全無視した向こう見ずな俄登山愛好家によって中高年の遭難は起こるのだな、と理解した次第。

 本日。夜、あまりの涼しさにそろそろ温かい飲み物が恋しくなってきたな、と、夏の間切っておいた電気ポットに洗浄用のクエン酸を入れ数ヶ月ぶりに稼動させる。それとは別に小さい赤いケトルをガスコンロに載せてから、ベランダに目隠し用の日よけとデッキチェアーを用意した。
 小さなガブリエル(白いバラ)が一本、闇の中でゆらゆらと風に揺れている。その心許なげな細い枝をそっと摘み、おそらく今年最後であろうベルガモットのような甘い香を胸いっぱいに味わった。
 キッチンではポットからいい感じに湯気が立ち上っていて、そんな些細なものに温もりを感じられる季節の到来に、ひとり微笑する私がいた。


 ああ、いつの間にか顔まで太ってしまった…orz。