ケータイの影/覚悟のスガコ


 一昨日のこと。

 いつものように夜更かしをしベッドに入った数時間後にふと気配を感じて瞼を開けると、黒い大きな影がすぐ横に立って私を見下ろしていた。
 私が起きたことに気づいたのか、その影はゆっくりと屈んで黒い右手でまず私の左手首を掴み、次に左手で右手首を押さえこんで、ぬぅっと顔を近づけてきた。恐いというのもあったが、それよりも先にキスされそうでそれがイヤで首を出来るだけ回して顔を枕の下に隠した。
 それからハッと目が覚めて、なんだ今のは、誰か死んだのか?と、なんだか胸騒ぎ。

 前日の昼頃キッチンで洗い物を済ませて部屋に戻ると、ケータイに見知らぬ番号の着信履歴があった。同じ番号で2件、私のケータイ番号を知っている人は極めて少ない。ので放置したのだった。
 が、どうにも夢見が悪かったので、朝の9時丁度にかけ直してみた。留守電の音楽とメッセージが固定電話のソレみたい。いや最初に架けてきたのそっちだし、誰だかもわからないのに何を残せばいいんだ。そもそもそっちが先にメッセージを残せばよかったんだ。それに単なる間違いかもしれないのだから。
 しばらくすると、その番号から架電。一息ついてから出ると、脳天気な軽いノリの「ハイハイ?」とこちらの用件を促すような男の声。


「あの、昨日の1時頃2度お電話を頂いたようなのですが…」

「あっ」


 そう言って切れた。何なんだ、失礼だな。こっちだってあんな夢さえ見なければわざわざ電話なんかしなかったわい。こっちはまた誰かが永久凍土行きになっちまったかとドキドキして一晩過ごしたというのに。

 あ、だから変な夢を見たのか。だからケータイって苦手なんだよ。


* * * * *


 昨日のこと。
 午後、銀行へ寄って、それから皮膚科へ。ここの女医さんは相変わらず適当に患者をあしらっている印象が否めない。
 一昨年初めて来た時、以前通っていた皮膚科で飲んでいた薬を聞かれ、「えーと、確か○×錠と…」と言うと、「○×に飲み薬はありません」とピシャリと言うので、「でもそれと同じ名前だったと思うのですが…」と言うと、今度は小ばかにしたように「コレを飲んでたって言うんですか?」と小さいチューブ入り軟膏を手でかざしたのだった。
 なんですか、私がチューブ入り軟膏を啜って飲んだとでも?相手が素人だと思って、顔色一つ変えずにアホ扱いするので憤慨したフルさんは次の通院の時、お薬の手帳に貼付けてある錠剤の写真入りの説明書を持って行ったのでした。
 その後の対応の変わりっぷりと言ったらあーた、ワタクシが「痒くて痒くて目が奥に引っ込んじゃうんじゃないかと思うほど瞼を擦ってしまうんですよね」と言うと、前回とは打って変わって「そうですよねえ、わかりますわかります」って大袈裟に同調してきたり。心にもないことまで言わんでよろしい。あれから一年経ってまたもとに戻ったか。別にどうでもいいけど。
 で、左の親指の爪に亀裂が入り割れないよう長いこと絆創膏を貼っていたせいか腹のほうが常に白くふやけてしまい、そこの皮膚が固くなってしまったのでついでに診てもらったら、ウィルス性のイボだと言う。で液体窒素で焼かれた。そして二週間後にまた来いという。
 誰が行くか。なんのために錠剤4週間分にしてもらったと思ってるんだ。(この時もちょっとイラついた。半年間毎日塗り続けたって使い切れそうもない軟膏までいるわけないだろって)それに以前別の皮膚科で焼いて貰った時は一回で終わったぞ。診療、薬代併せて3,680円也。うへぇ。
 その後日用品のお買い物、帰りにケーキを二つ。五百円のポイントを使いこちらは約170円也。一個、ケンブにお供え。ま、すぐ二つとも私のお腹におさまったが。意外にも体重は1キロ減だった。どうりで顔が貧相に。
 ああ、前髪切っちゃおうかな。前髪ある方が私っぽいと妹も言うし。それともまた『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグみたいなベリーショートにしちゃおうかしらん。
 橋田壽賀子になること覚悟で。