おのぼりさんが通る!

fleurette2010-12-12



 朝、用事を済ませて高速バスに乗り込む。久々の上京。本当は水曜のレディースデーを狙って行きたかったのだけど、都合が悪くなったのと『白いリボン』を除いてあまり惹かれる映画がなかったからで、クリスマスと歳末で浮かれきった都会の中に身を投じてみるのも何かの修行になるかもしれない、と。そのわりには前夜に、やっぱりなんかヤダなあと泣きついてみるもあえなく撃沈。だよなあ、この時季に暇を持て余してる気の毒なヒトなんて私だけだよなーと修行僧になる決意を。
 バスの中で、まずは渋谷へ行こうと思っていたのだけど変更を考えた。プラネタリウム好きの私はコスモポリタン渋谷で"はやぶさ"を観たかったのだ。が、どうもチケットをとるのが難しそう。土曜のサイトにはそうそうにチケット完売の文字があったし。
 で、観たい映画も銀座だったので、思い付いたのが泉トゥルネル画廊へ向かうこと。ここは大好きな画家、村山密(むらやましずか)画伯の作品が所蔵されている。村山画伯の『ルーアンの聖堂』に魅せられてルーアンまで本物を観に行った旅行記を以前持っていたサイトに書いていて、それを読んで下さった画伯のハトコ殿が教えて下さった画廊である。その時に教えて頂いた村山密展の初日と楽日にはもちろん駆け付けた。画集でしか見ることができなかった本物の『ルーアンの聖堂』に10年経ってやっと出会うことができたのだもの。思った通りの素晴らしい作品に感動。ルーアンの街の中心の広場に現れる実物の荘厳な大聖堂よりも、モネのソレよりも何倍も村山画伯のこの絵が好きなのだ。で、初日にその美術館所蔵の作品のスペルの間違いを目ざとく発見し、係員の女性から呼び出され面倒くさそうに現れたキュレーターとおぼしきを男性にそのことを伝えてへこませてしまったりしたことを面白おかしくご報告したら、クリスマスツリーをバックに画伯夫妻とハトコ殿が写った画像をご褒美に頂いたりしたのでした。(これは宝物だし、ご本人の了解のないところでネットに載せることは致しませんのであしからず。)
 まず、東銀座のデニーズでゆっくり昼食を取った。昭和通りの一本裏手の通り。実は3年前の夏にも一度訪ねたのだが、その時は地図を忘れてしまい、暑さや突然の雨に阻まれてたどり着けなかったのだ。ハトコ殿は連絡してくれれば案内しますよ、とまでおっしゃってくださった。押し売りもしないから安心して下さい、と添えて。あれからだいぶたってしまったが、今日こそ!と勢い勇んで向かいますと、そこには"牧神画廊"の文字。しかも本日は日曜で、近くの画廊は全てお休みでした。(気づくの遅い)もし、近くで事件でも起きていたら、長いこと辺りを行ったり来たりを繰り返すのを見ていた向かいの中華レストランの準備をしていたシェフ?に、私は間違いなく不審者として通報されていたことでしょう。
 またしても撃沈。ここで映画まで外すわけには行かないと、銀座テアトルシネマに向かいますと、一階でオネーサンが『白いリボン』の16:00の回は後一席だけだと叫んでおりました。それを聞いて一組のカップルが「立見はダメですか?」と食い下がるも、ノンとの返答に立ち去ってゆき、エレベーターに乗ったのは私と一人の青年だけ。5階に着いて我先に飛び出した青年はチケット売場を素通りして会場に突入したので、チケットを持ってたのね、とゆっくりチケット売場の前に行きますと、さっきの青年が『白いリボン』のポスターの少年ばりの陰鬱な表情で戻ってきたのです。私はクスっと笑ってしまっていたかもしれません。

私「『白いリボン』の19:00の回のチケットを一枚お願いします。」

 「16:00の回を一枚!」と続く彼。一緒にいたのが私でラッキーだったでしょ?

 空いた時間は松屋で27日までやってるバービー展など。

 時間潰しで入ったので期待してなかったのですが、なかなか面白かったです。着物に角刈りのサブちゃん人形もありました(笑)。個人的にはバービーよりも従姉妹のフランシーのほうが好きかな。中には『山猫』の時のクラウディア・カルディナーレを思わせるようなバービーも。ジバンシーなど一流どころがデザインしたドレスを纏ったバービーもありましたが、私が気に入ったのはコムサかな。ヘアスタイル、表情、ドレスなどのトータルバランスが可愛くてオシャレだった。
 次に向かったのは上野の国立科学博物館プラネタリウムは諦めましたけど、"はやぶさ"はあきらめません。「飛べ!100年の夢―空と宇宙展」に、閉館1時間前に入館。小惑星イトカワの名前にもなった糸川先生が学生の頃に綴った観察ノートの表紙の肉筆(鉛筆書き)の筆記体のアルファベットの文字が私の字と似てるなーなんて思ったり、発動機の図面を見て「アートだよなあ」と改めて工学系もアーティストの領域なんだなあ、と感心したりしたのでした。

はやぶさ

はやぶさのバック

イカロスの翼の一部

 閉館の時間になり表に出ると既に暗く、流れに沿って歩を進めて行くと、小さな明かりを囲むように人が集まっていて、私もその明かりに吸い寄せられる虫のごとく、その輪に加わったのでした。

 途中から見たその外国籍である若いマリオネット使いの芸は正直微妙なものでありましたが、曲が終わっても誰も帽子の中にチップを入れようとはしなかったので、もう少し見てからと思っていたのだけど、慌ててお財布に手を伸ばして500円玉があったはずと用意していると、小さな女の子が帽子の中にチップを入れ、礼を言われ恥ずかしそうに母親の所に抱き着いておりました。
 次いで私も「サンキュー」と言って帽子にチップを入れると、意外とハンサムだったマリオネット使いも「サンキュー」と。それから、「イッポマエヘチカヅイテ、アシブミ、アシブミ、モット」と、日本語ペラペラ、んー、ベラベラくらいでした。ちょっと盛り上がった所で一曲終了した後は皆がチップをあげだしたので、それを見届けてからその場を去りましたが、もうちょっと観ててもよかったかな。
 夕食を取り、再び銀座へ。映画についてはまた別に書くことにして、帰りのバスの中で久々というか初めてかもしれませんが、真性ドキュン娘と接近遭遇してしまいました。私の後ろの席だったので何をしているのかは見えません。音声のみですが、彼女たち(二人組で一人は小声で相槌うってるのがかすかに聞こえるのみ)は、乗り込むなり「うわあ、酒くせえ!なんだよ、迷惑だなー。あー、酒くせえ、息すんなっつーの、しゃべんなよ、くせーから寝てろよって感じ〜?…。ねえねえ、化粧もう落とすっか。…。あー、スッキリした。これでやっと皮膚呼吸できるわ。がっはっはっ。…。どうする?靴下も脱いじゃう?(前の私の座席をわざと蹴り飛ばしながら)はー、楽チン楽チン!」

 ………。

 酒臭いのよりお前らの足のほうが臭いんじゃっ!!それにチミらの一際デカイ声でのおしゃべりは、口害汚染レベルだから!お酒臭いのよりそっちのほうが迷惑だっつーの。
 帰りのバスは本当に最悪だった。行きは三人しか乗客がいなくて、年配の女性に「貸し切りみたいですね」なんて、途中のパーキングに立ち寄った時に話し掛けられていい雰囲気だったのに。

「あー、いつか都会に住みてえ〜」

 その夢、是が非でも叶えてくれっ!!