夢ならいいのに

fleurette2011-08-20



 今朝は4時ごろまで起きていて、このままチャリ乗りに行っちゃおうかな、と思ったけどカーテンを開けたらまだ暗くて寝ることにした。

 ベッドに入った時、なぜだか「夢を見させて下さい。夢だけでいいから、神様、お願い」と念じてたら涙が止まらなくなった。

 11時に目覚めて、掃除、洗濯。バナナジュースを作って飲みながら、なぜかアイルランドの古い祝福の言葉(*1)を思い出す。外は曇り空で絶好のサイクリング日和。


13:50 出発

 バゲットでも買ってくるか〜、と出掛けたつもりがなぜか○×川のサイクリングコースに変更になる。途中、自宅から7キロ地点のコンビニでおにぎりとキャンディーを買う。バナナジュースだけで飛び出してきてしまったのが不安だったのだが(以前、貧血を起こして動けなくなり途中で帰ったことがある。)、これでだいふ落ち着いた。私は暗示にかかりやすいタイプかもしれない。

 サイクリングコースに到着しても殆ど人がいない。気持ち良くドンドン進む。前回来た時よりも更に遠くへ。○△□市に入った所で小休憩、おにぎりを食べる。まだまだ行けるぞ。自分の足だけで市を越えたことって初めてじゃないかなあ。いや、おまた休憩したい〜ってひぃひぃ言いながら初めてサイクリングコースを走った時、あの時もちょっとだけ越えたか。でもコンディションがあの時とはまるで違う。もうほんと行けるとこまで行ってやろうと思った。

 が、サイクリングコースがまた工事中の標識に阻まれ迂回することに。一面田んぼだ。待宵草の花びらのような蝶やシオカラトンボが何匹も飛んでいる。その田んぼ道(といっても舗装されている)の先もまた工事中だった。しかたがない、ここで引き戻すか、とUターンをしてほどなく綿の花に似たピンクの大きな花をケータイで撮っていると、左足の辺りに温かい空気を感じた。見てみると、いったいいつの間に現れたのか、黒い柴犬がいた。どっから来たの?と顔をなでるとすごく嬉しそうによりそってきてペロペロ手を舐めてくる。前のお宅のワンちゃんだと思ってたのに、バイバイと言ってもどんどんついて来る。県道を越える前に引き返してきた道にまた戻って、庭先に出ていたおじさんに聞いてみたがわからないと。

 しかたなく、散歩してる人や除草作業をしてる人に尋ねながら帰ることに。どこまでもどこまでも一緒に前に出たり、隣に来たり、何かに気をとられ遅れたり。疲れたかな?と思ってスピードを弱めると、前方のカラスの群れに、遊んでーとばかりに元気に走って行ったり。全く吠えないコ。土手の下のサイクリングコースを走っていたら、板チョコみたいなコンクリの道になって危ないなとブレーキをかけたところでタイヤが溝に嵌まって落車。黒柴ちゃん(メス)たら、すかさず駆け寄って来て、私の顔をペロペロ舐める。


 もう、ウチ、来るか?


 前回父が犬を飼う気になっていたのは、アパートの横にセンサーを取り付けたことでご破算になってしまっていたけど、カワイイし、吠えないし、Pちゃんが欲しがってた眉毛のある黒柴だし、ウチでしばらく預かって飼い主が見つからなければ…。


 名前は何にしよう、モモ、うーんありきたり。コスモ、あ、いいかも。川べりの木に胡桃がたくさんなっているのに気づき、くるみ、くるみ!いいんじゃない!と、思いつつ、このコの飼い主と本当の名前のことを考えて、口にはしなかった。だいぶ走って疲れて来たようだ。もう少し頑張れ。途中の自販機で水を買い、キャップで受けながら飲ませてやった。後12キロ。サイクリングコースから一般道に出てからは道路に飛び出さないよう注意して自転車から降りてずっと一緒に歩いた。途中ついて来ないなと思ったら、小学生の後をついて行きそうなって引き返したり。名前がわからない、まだないから呼びようがない。もうだいぶ暗くなってきた。車の通りが激しいところがまだまだたくさんある。

 行く時、おにぎりを買ったコンビニで何かリードの代わりになるものが売ってないか入ることにした。赤兎をロックしてる時、店から出て来てバイクに乗ろうとしていた若者にワンコが近寄って、私にしたように前足を足に掛けて甘えてるのが見えた。その若者も、あれ、カワイイな、という感じに優しく微笑んでいたので、よし今のうちに、とコンビニに入って、ワンコのご飯ちっちゃいのとビニール紐を買った。レジのおにいちゃんに鋏で適当な長さに切ってもらった紐をもって外にでると、ワンコはもういなかった…。

 あともう少しでウチなのに。慌て自転車に乗って散歩してる人片っ端から聞いた。「こっちを歩いてきたけど見なかったわ」、「犬種はなんですか?」

 辺りをぐるぐる行ったり来たり。こんな遠くまでついて来たのに、なんで目を離してしまったんだ、バカだ、私は。車で探そう、早く帰らなきゃ。一期一会なんて嫌なんだ、私は。ほんの少しでも何か感じるものがあったら何度だって会いたいんだ。うー、涙でそう。とか、考えながらペダルをシャカリキになって漕ぐ。

 赤兎を担いで階段を上がり土足のまま部屋に入って、免許証と財布を買い物バッグに突っ込んで車に乗り込む。私に本当に力があるなら、見つけられるはず。ケンブを捜し出した時みたいに。

 コンビニの回りの住宅地の中、サイクリングコースの手前の一般道まで戻ってみた。サイクリングコースの長い距離をずっと疲れてもトコトコついてきた姿や草むらに入って蜘蛛の巣だらけになった顔や転んだ時真っ先に駆け寄って躊躇うことなく私の顔をペロペロ舐めたことなんかが浮かんできて、もう、ダメだった。夢ならいいのに、今日一日あったこと全部夢だったらいいのに、と思ったら、声を上げて泣いていた。

 あの男の人について行ったんだ。きっとメスだから男の人のほうがよかったんだ。とても優しそうな人だったから大丈夫。きっと人懐っこいから、ああやって人についてどんどん遠くへ来ちゃったんだ。黒い首輪してたのに、鑑札ちゃんと付けといてくれれば飼い主のとこ帰れるのに。

 自分でもまるで小学生みたいだと思うけど、子犬をデコボコしたコンクリの壁に何度も何度も叩きつけて殺すような変質者が何のお咎めもなくのさばってるような国にはいたくない。昔、ケンブがまだ子犬だったころ、ケンブとまだ小さかったYちゃんやAちゃんと車で海に行った帰り、信号待ちで並んでいた何台もの車がその異様な光景に目にしたが誰一人止めることができなかった。完全に目がいってしまっていたから。私は思わず「何やってるの!」と叫んだが、姪っ子たちに危害が加わるのを恐れて、それ以上何もできなかった。

 いつかペンザンスのような所に住みたいと思う。きれいな緑の草原を気持ち良さそうにリード無しで自由に走ってたワンコ。ケンブにもあんなふうに走らせてあげたいな、と思い出しては公衆電話から国際電話をかけてケンブの様子ばかり聞いていたっけ。

 私は運命論者がどういう人のことなのか知らないし、運命について論じたことなど全くない。だけど、運命を信じているので、明日、また捜しに行く。

 頭イタイ。


(*1)
May the road rise to meet you.
May the wind be always at your back.
May the sun shine warm upon your face.
And rains fall soft upon your fields.
And until we meet again,
May God hold you in the hollow of His hand.


道がつねにあなたの前にありますように。
風がいつもあなたの背中を押してくれますように。
太陽があなたの顔を暖かく照らし、
雨があなたの畑にやさしく降り注ぎますように。
そしてふたたび会う日まで、
神様がその手のひらで、あなたをやさしく包んでくださいますように。


走行時間:4:40'10
走行距離:49.29km
平均速度:10.5km/h
最高速度:44.1km/h
消費カロリー:412.1kcal
積算距離:407.5km