ぼくのエリ 200歳の少女


2008年 スウェーデン
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作・脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション


 森や林の中の雪景色、孤独を抱え寄り添い合う二つの無垢な心、運命の女、そして愛の逃避行…と、私の好きな要素がテンコ盛りでした。そしてオスカー役のカーレ君がプールの中で見せたあの何とも愛くるしい笑顔は、私の中で長年美少年第一位に君臨してきたビョルン・アンドレセンを越えましたよ。マシュマロよりふわふわしていそうな真っ白な頬っぺた、赤い唇、カーレ君こそ永遠に変わらずそのままでいてほしい、なんて。
 原作を読んでいないのでアレなんですけど、どっかのレビューサイトにエリは本当は去勢された男の子なのに、ボカシのせいでそれが伝わらなかったとあったのですが、確かに、エリはオスカーに好きだと告白されて「女の子じゃなくても?」と返答しているのが、その隠蔽によって単にバンパイアであっても?という意味のみに集約されてしまうわけで、もしそれが映っていたなら、なぜエリというバンパイアが生まれることになったのか、ということまで想像の翼を広げる手助けになったのではないでしょうか。エリも酷いことをされ続けた。だからこそオスカーにいじめっ子たちにやり返すことをすすめたという…。そういったペドフェリア臭は、離婚した父の家に突然訪ねてきた父親の友人の男のただならぬ気配からも醸し出されています。
 扉の前で「中に入っていい?」というエリの問いかけは、「あなたの世界に入っていい?私を受け入れてくれる?」と同じこと。部屋に入ることは容易にできても、真に受け入れられなければ、人だってこんなふうに見えない血を全身から流すものなのです。


 逃げて生き延びるか、留まって死ぬか


 一度はオスカーの前から姿を消したエリでしたが、オスカーの命の危機に戻って来ます。そしてプールで起こった惨劇。少年は電車に乗って街を出ます。大きな箱とモールス信号を交わしながら…。それが、エリがパパと呼んでいた男と同じ道を辿ることだと知ってか知らずか、生まれたばかりの無垢な愛だけをもって。
 蛇足ですが、ラストのその列車のシーンでは、だだ大好きな映画『風の痛み』を思い出したりしました。