初富士山、ではなく-3


 だいぶ間があいてしまったけど、つづき。


 昼食は蕎麦。暑いときはこれに限る。館内に流れていたのは『リ○王』で使われた音楽。白い壁に四季折々の劇場の様子が繰り返し映し出されていた。コーヒーを飲みながら、受付の時間になるまでしばらくそれを眺めていた。


 川の反対側の劇場に向かう橋の真ん中で覚えのある顔が近づいてきた。


 「Mさん?」と声を掛けると、驚いたように向き直って立ち止まった彼に「○○でお世話になったフルです」と言うと「ああー」と、地声が大きい。私、そんなに変わったかな、とか思うももうウン十年も月日は流れているわけで、そりゃあ老けたよな、と。今じゃただの汗っかきのおばさんだ。挨拶してそうそうに別れると、後ろの女性たちが彼の後姿を目で追いながら「今のMさんだよね?」と話していた。振り向いて「Mさんですよ」と。顔が知れる役者になったのだな、と、なんだか嬉しくなる。


 途中に咲いていた葵の花



 受付でチケットをもらい、休憩テントのほうを見るとまたまた懐かしい顔が。近づいて「△△くん」と声を掛けると、ちょっと間をおいてから「うわぁ、フルさ〜ん!?」とちょっとひっくり返ったデカイ声。「うわあ、なんか涙でそうー」とか言われる。そのあともTちゃんを見かけ声を掛けるとハグされたり。


 去年は夜の公演のみだったので誰とも出会うことはなかったけれど、なんだろう、話してる時はただただ懐かしさで高揚してるのだけど、別れた途端、自分はもう完全な部外者で、頑張って続けてきた人たちとの差をまざまざと感じてしまってなんだか居場所がないような…。もう戻らない、戻れないんだと、それがわかっていたからこれまでずっと避けてきたというのもあったのだけど…。

 が、それも過去のことだ。昨年Sさんの訃報を知っていてもたってもいられず追悼公演に駆けつけ、そこでこれからの関わり方を思い出した。


 一ファンとして、堂々と公演を観に行くこと。それが彼らの応援になるんだということを。



 
 つづく、のかな?