春、東北、温泉郷 1日目(緊急事態宣言前のことです)

前日に最寄駅の駅員さんに電車旅の工程表を見せどのように切符を買うのが効率的か相談し、駅員さんが頭をひねって取ってくれた切符がちょっと複雑で不安だったのだが、案の定、最初の到着駅で1時間ほど乗換時間があったので途中下車しようと切符を提示すると、若い駅員さんにいきなり回収されそうになった。

 

当惑しながら

 「待ってください。今これで乗ってきたばかりなんですけど」

 「帰りのチケットを見せてください」

パンパンに詰め込んだミシュランバックパックを肩からおろし、財布を取り出して帰りのチケットを提示すると

 「うん、これで帰れます」

 「え?いえ、日付見てください。今日一日目です。これから○線と×線と△線と◇線を旅してここに戻ってくるんです。」

切符をまじまじと見て、笑いながら

 「すみません。ちゃんと見てませんでした!」

 「・・・。」

 

んもう、可愛いから許す!

 

着いたばかりの最初の駅でいきなり帰されそうになってんですけど大丈夫か、私。てな感じ。

 

次の次、つまり本日三番目の在来線の電車の中で食べる遅めの昼食の駅弁を購入。山の中を走る単線の在来線、大好き。ワクワクする。トイレさえついていれば何時間でも乗っていられる。一度も利用したことはないけれど、まあお守りみたいな安心感があるので。

温泉郷の女将監修のお弁当ということだったが、「あら、美味しい」と思ったのはデザートの栗大福。お土産にどうぞってことか、賢い。

 

いくつかの温泉郷を抜け、雪山が迫ってくるともうじっとしてられなくて、スマホで写真を撮りまくり。いつのまに乗り鉄撮り鉄になったのか。あ、電車の写真は撮ってないから撮り鉄ではないか。とりあえず、女性に鉄分補給は大事なのです。

 

なんやかんやで駅到着。ホームに降りたのは私だけだったが、宿に送迎を予約してあったので、一人お迎えのマイクロバスに乗り込む。一人旅でもネット予約ができた貴重な温泉郷の旅館。チェックイン時に明日の駅までの送迎の予約をし、今夜は温泉にゆっくり浸かって体を休め、明日のメインの観光に備える、つもりだったが、湯船から全面見渡せる露天風呂がある小さい日本庭園風の庭は簡単に外から人が入ってこれるような作りで、その庭のほうからカタンカタンと物を片付けるような音がしたもんだからトラウマが蘇り、落ち着かなくてサッサと出てしまった。電車に乗っている時、窓から露天風呂が丸見えの宿があったりして「随分開放的なんだな、私には絶対無理」と思ったのを思い出した。

 

部屋に戻って、ウエルカムバイキングとでもいうのだろうか、いくつか選んで部屋に持ってきていた数種類のお菓子と胡椒のきいたごぼう茶を飲んだ。ちょっとしょっぱかったけど美味しくて最後まで飲み干したら胡椒の粒が気管に入って思いっきりむせてしまった。この危険なトラップが仕込まれた飲み物が気に入り、ごぼう茶好きの姉にも是非飲んでもらいたい、明日売店でお土産に買おう、と、歯を磨きながら思ったのでした。