アリス・イン・ワンダーランド

fleurette2010-05-03



2010年 アメリ
監督:ティム・バートン
出演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイ


 『アバター』を観てしまった後では、これが3Dだと言われても俄に信じられませんでした。あらゆる点でスケールが違い過ぎますね。ただ『アバター』ではなかった胸を絞めつけられるようなシーンがいくつか。

 異形の者として生まれたがゆえに、愛されることを諦め畏れられることで孤独から逃れることを選んた赤の女王の悲哀は、最後まで誰からも理解されることはなく終わる。それは自ら選んだあまりある残虐な行為の報い。彼女と対峙するのは妹の白の女王ではなく、「道は私がつくる!」と、目覚めの時を迎えたアリスに外ならない。


「有り得ないことを6つ考える……ジャバウォッキーを私が倒す!」


 戦士アリスがそう叫んだ時、これから起こるであろうあらゆる困難に果敢に立ち向かって行こうとする一人の若者(少女から自立した女性へと成長する)の純粋無垢な勇気を目の当たりにして、目頭がジワァと熱くなったり。

 派手な出で立ちのジョニデには多少の肩透かしは否めない。過剰さが今回ばかりは上手くいかなかったみたい。ま、それもたまにはご愛嬌ってことで。

 そうそう、アリス役のミアがあまりに中性的で、『ベニスに死す』の美少年タジオ役のビョルン・アンドレセンを思い出したりしたのだが、ビョルンが少年でありながら自分の美しさを知り尽くした妖女のような魅力を全開にしているのとは対照的に、色(香)というものが極端に抑制されていたような。
 「可愛さ」ではなく「美」というものは性別を超えると思っている。生まれたばかりの赤ん坊やうんと年をとった老人が男なのかそれとも女なのかわからないように。んー、この例えはちょっと違うかな。ま、同じような顔なら、男はより色っぽく、女ならより骨のある男に見えるということか。
 ビョルンはあの年齢だからこそ出せる妖しい魅力が全開で、初めて『ベニスに死す』を見た時はホントおったまげたもんだった。彼がいたから『ベニス〜』が出来たとビスコンティも言ってたとかなんとか。あらら、だいぶ話がそれてしまったみたいです。