my favorite songs


 怖い顔をしていたかもしれない。

 が、帰宅してから、やりきれない気持ちになった。


 私が中学生の時、姉がジャズを聴きだして隣の部屋だった私は否応なしにそのナンバーを聴かされた。その時に、意味もわからないまま好きになったのがエラの歌だ。







 サテン・ドールは口真似して当時一番歌った。一番衝撃を受けた歌だし、何より姉が借りてきたレコードでは唯一スキャットだったから。ライブ版だったようで、マイクが安定しなくてガタガタ音がしていたのだけど、彼女はそれも即興で「このマイクどうしちゃったのかしら」とおどけて歌ってみせ、聴衆がまた盛り上がる。力強くて、粋で、あるもの全てを温かく包み込んでしまうような母性を感じる声。歌の力を知った。